日本公認会計士協会は、2013年7月2日付で経営研究調査会研究報告「不正調査ガイドライン」(公開草案)を公表しました(意見募集期限:平成25年7月15日)。
公認会計士が実施する不正調査業務の増加を受け、その概念や手法、調査手法などを体系的に整理・作成されたものであり、日本弁護士連合会より2010年に公表された「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に比して、大変ページ数の多い内容となっています。
ちなみに、今回の草案では、不正調査人は、依頼者・企業等による調査結果の公表に先立ち、その内容を依頼者・企業等と協議・確認し、依頼者・企業等が行う公表に齟齬が生じないようにすることが望ましい(同公開草案Ⅷ2.)と起案されています。
一方、日本弁護士連合会による同ガイドラインでは、調査報告書は事前非開示として、調査報告書提出前に企業等にその全部または一部を企業等に開示しないこととされています(同第二部第2.3)。そして、調査報告書(原文)とは別に開示用の調査報告書を作成でき、非開示の部分は企業等の意見を聴取して第三者委員会が決定することとされています(同ガイドライン注8)
依頼者・企業等と第三者委員会ないし不正調査人が常に協働歩調して不正調査が進められる場合には、このような規定の微妙な差が実務に及ぼす影響は、ほとんどないものと思われます。
しかし、先月明らかとなった、全柔連が全日本柔道連盟の助成金問題を調べる第三者委員会に対して報告書の内容変更を促す要望書を再三送付したケースのように、企業会計不祥事においても、依頼者等・企業等が、不正調査人が作成する調査結果内容に、自身にとって不利な内容を記載しないよう介入し、圧力をかけることは十分ありうる事象に思えます。
そういったシリアスな局面では、同草案における上述の記載の解釈が、調査報告書の方向性や品質、そして不正調査人の独立性をも左右する、まさに重要な鍵になるものと考えられます。