証券取引等監視委員会「インスパイアー株式会社に係る有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について」を公表

9月2日付けで証券取引等監視委員会は、ジャスダック上場のソフトウエア開発会社であるインスパイアー株式会社に係る有価証券報告書等の虚偽記載を違法行為と認定し、金4,336万円の課徴金納付命令を発出するよう、金融庁に勧告を行いました。
同社は、実際には、カード事業に係るソフトウエアの開発を行っていなかったにもかかわらず、同事業のためのソフトウエアを開発するなどとして「ソフトウエア仮勘定」等の架空の資産を複数年度に亘り計上していたとされています。
金融商品取引法第172条の4第1項及び第2項に規定する「重要な事項につき虚偽の記載がある」とした有価証券報告書等は下記の通りです(継続開示及び発行開示含む)。

•平成21年9月第2四半期四半期報告書(平成21年11月16日提出)
•平成21年12月第3四半期四半期報告書(平成22年2月15日提出)
•平成22年3月期有価証券報告書(平成22年6月28日提出)
•平成22年6月第1四半期四半期報告書(平成22年8月16日提出)
•平成22年9月第2四半期四半期報告書(平成22年11月15日提出)
•平成22年12月第3四半期四半期報告書(平成23年2月14日提出)
•平成23年3月期有価証券報告書(平成23年6月28日提出)
•平成23年6月第1四半期四半期報告書(平成23年8月15日提出)
•平成23年9月第2四半期四半期報告書(平成23年11月14日提出)
•平成23年12月第3四半期四半期報告書(平成24年2月14日提出)
•平成24年3月期有価証券報告書(平成24年6月29日提出)
•平成24年6月第1四半期四半期報告書(平成24年8月14日提出)
•平成24年9月第2四半期四半期報告書(平成24年11月22日提出)

なお、同社は、今年3月期決算の有価証券報告書の提出遅延により、8月12日付で整理銘柄に指定されており、9月13日に上場廃止される予定です。

金融庁「日本風力開発株式会社に係る有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金納付命令の決定」

金融庁は、8月29日付で「日本風力開発株式会社に係る有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金納付命令の決定を公表しました。

平成25年3月29日、証券取引等監視委員会は、同社は、関東財務局長に対し、下記の有価証券報告書につき、実態のない風力発電機販売斡旋取引に係る売上の計上があるとの違反事実を認定し、金融商品取引法第172条の2第1項に規定する「重要な事項につき虚偽の記載がある」として金3億9,969万円の課徴金納付命令を発出する旨、金融庁に勧告しました。
○平成21年6月24日提出 第10期事業年度連結会計期間に係る有価証券報告書(平成20年4月1日~平成21年3月31日の連結会計期間)
○平成22年7月28日提出 第10期事業年度連結会計期間に係る有価証券報告書の訂正報告書(平成20年4月1日~平成21年3月31日の連結会計期間)

これにつき、同社は、有価証券報告書に虚偽記載はないとして審判手続を申し立てたとこにより、以後審判官3名により審判手続(平成24年度(判)第41号金融商品取引法違反審判事件)が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法第185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、金融庁が課徴金納付命令を決定しました。

審判手続においては、実態のない風力発電機販売斡旋取引に係る売上の計上につき、
1.役務提供の実態がないことについて
2.対価の実態がないことについて
の二点が争点となりました。

これらにつき、審判官は、
○本件各販売斡旋契約に係る役務の内容として被審人が主張する行為は、本件各販売斡旋契約の存在いかんにかかわらず被審人が行う被審人自らのための行為にすぎないと認められる。
○風力発電機の販売先である建設会社から売買代金の一部を受領した後に、被審人に対し、本件各販売斡旋契約に係る販売斡旋手数料を支払っており、また、建設会社は、発電所子会社から工事代金の一部を受領した後に、風力発電機メーカーに対し、その受領した金額の範囲内で風力発電機売買代金を支払っていたものである。
などを認定することにより、指定職員(当局側)の主張を認めています。

なお、同社は、命令決定の同日、裁判所に対して課徴金納付命令の決定の取消しの訴えを提起し、別途平成25 年4月18 日付けで開示した「有価証券報告書の虚偽記載に係る訂正報告書の提出命令取消に関する訴訟の提起について」における取消訴訟(現在係争中)と共に、当局側と争う旨をリリースにより明らかにしています。

第三者委員会報告書格付け委員会、第二弾格付け結果(「株式会社リソー教育第三者委員会の調査報告書(公表版)」に対する調査報告書)を公表

平成26年8月28日、第三者委員会報告書格付け委員会(委員長久保利英明、國廣正、齊藤誠、竹内朗、行方洋一の弁護士5氏と、高巌、野村修也、八田進二の大学教授3氏、科学ジャーナリストで元日本経済新聞論説委員の塩谷喜雄氏の総勢9人により構成)が、「株式会社リソー教育第三者委員会」が2014年2月10日に公表した「調査報告書(公表版)」に対する格付け結果を公表しました。

企業不祥事(不正会計事案を含む)が発覚した際に、不祥事企業が、独立した委員により構成される第三者委員会を設置し、事実調査、原因究明、再発防止策の提言といった役割を、同委員会に委ねる実務慣行が定着していますが、かねてから「玉石混交で、不祥事を起こした組織に都合の良い報告書がかなり目に付く」との指摘が一部のステークホルダーや関係者よりなされています。
このため、「第三者委員会報告書」の内容を精査して、格付けするという「第三者委員会報告書格付け委員会」という組織が立ちあげられ、今年6月に第1弾として、みずほ銀行の(反社会的勢力癒着問題に関する)特別委員会報告書(公表版)が格付けされていますが、本件の公表はその第2弾となります。

「株式会社リソー教育第三者委員会」(弁護士髙野利雄氏(元名古屋高等検察庁検事長)委員長、同神垣清水氏(前公正取引委員会委員)、同佐々木善三氏(前京都地方検察庁検事正)及び公認会計士南成人氏(仰星監査法人 代表社員)を委員とする4 名で構成)による調査報告書は、みずほ銀行の場合とは異なり、証券取引等監視委員会により有価証券報告書の虚偽記載が認定され、課徴金の行政処分がなされた不正会計事案に関するものです。

同格付け委員会にとって、初めてのディスクロージャー案件となる当該調査報告書は、日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠して作成した、と公表されていますが、その格付けはCが2名、Dが3名、そして、最低ランクであるFが2名とされました。

この評価方法については、同格付け委員会での議論に基づき、各委員が、A、B、C、Dの4段階で評価され、内容が著しく劣り、評価に値しない報告書についてはF(不合格)とされるとのことです。

第一弾のみずほ銀行の格付けはCが4名、最低はDで4名であり、公表当時にはそのシビアな評価に、各メディアや関係者の間で結構話題となりましたが、今回の格付けはそれを更に下回る、大変厳しいものとなっています。

【日税連税法データベース】法人税法第22条4項「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」につき過年度遡及修正を認めず、企業会計原則の前期損益修正により修正するのが相当とする判例が登録されました~TAINS情報

個人的に興味深い、前期損益修正に代えて更正の請求をすることの可否等が争われた行政裁判例が、日税連税法データベース(TAINS)に収録されました。

事件番号    平成24(行ウ)212
事件名     更正すべき理由がない旨の通知処分取消等請求事件
裁判年月日   平成25年10月30日
裁判所名    東京地方裁判所
(裁判所HPによる判例全文)

<事案の概要>
消費者金融業を営んでいたA社が、顧客から支払を受けた制限超過利息を含む約定利息(いわゆる過払金)を益金の額に算入した上で法人税の確定申告をしていたところ、その後の更生手続において、過払金返還請求権に係る債権が更生債権として確定しました。
これを受け、A社の管財人である原告が、各事業年度において益金の額に算入した制限超過利息等に係る部分は過大であり、企業会計基準委員会が平成21年12月4日に公表した企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の遡及処理をを導入したことなどに照らすと過年度の遡及修正を認めるべきである旨等を主張して、更正の請求をしました。しかし、税務署長より更正をすべき理由がない旨の通知処分を受け、更に国税不服審判所長に審査請求をしたが棄却の採決をされたことから、法人税の還付を求めて提訴したものです。

<裁判所の判断>
東京地裁は、企業会計原則において、過去の利益計算に修正の必要が生じた場合に、過去の財務諸表を修正することなく、要修正額をいわゆる前期損益修正として計上する方法を用いることが定められていることは、法人税法22条4項に定める公正処理基準に該当すると解するのが相当、と判断しました。
法人税の確定申告は確定した決算に基づいて行うもの(法人税法74条1項)であり、遡及処理が過去の「確定した決算」を修正するものではないから、上記の遡及処理が行われた場合でも、その過年度の確定申告において誤った課税所得の計算を行っていたのでなければ、過年度の法人税の課税所得の金額や税額に対して影響を及ぼすものではない(国税庁が平成23年10月20日付けで公表した「法人が『会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準』を適用した場合の税務処理について(情報)」)。本件においては、仮に何らかの上記の遡及処理をすることができる類型に該当したとしても、過年度の確定申告において、制限超過利息の収受が法的に無効であるか否かに関わらず現実に生じた経済的成果として申告するという正しい課税所得の計算を行っていた、としています。

結果、本件更生手続において、各事業年度において益金の額に算入されていた過払い金(制限超過利息)につき、その支払が利息等の債務の弁済として私法上は無効なものであったとしても、それについては、当該確定の事由が生じた日の属する事業年度において処理されることとなり、過年度遡及修正は認められないとともに、各事業年度の課税標準等又は税額等の「計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」になるとはいえないというべき、とのことです。

なお、本件で企業会計基準第24号が「一般に公正妥当と認められる会計の基準」として認められず、企業会計原則によるとされた根拠については、同24号は「平成23年4月1日以後に開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤びゅうの訂正から適用されるものである(したがって、本件更生会社に係る更生債権の一般調査期間の末日である平成23年5月12日の属する平成22年11月1日から平成23年10月31日までの事業年度については,その適用はない。)」とされています。

企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の遡及処理の適用判断については、今後、国税通則法第23条に基づく更正請求手続の争いの余地が残る書きぶりです。

日本公認会計士協会がホームページで「監査提言集」を公表

平成26年7月1日(火)、日本公認会計士協会がホームページで「「監査提言集」の公表について」を公表しました。  

公表された資料は、「監査提言集」における監査業務の各段階、手続に分けた提言部分を集約した「監査提言集(一般用)」です。

※会員専用ページには、会員用77ページ版が掲載されています。

日本公認会計士協会が「開示検査に関する基本指針(案)」に対する意見について公表しました

平成25年8月1日、日本公認会計士協会は、平成25年6月26日に証券取引等監視委員会が公表した「開示検査に関する基本指針(案)」に対して取りまとめ、平成25年7月25日付けで証券取引等監視委員会に提出された意見が「「開示検査に関する基本指針(案)」に対する意見」として公表しました。

本公表では、全般事項において、開示検査の透明性を高めるために、本基本指針が策定され、開示検査にかかる実施手続等がされることに賛成する見解が明らかにされています。
また、個別事項においては、証拠収集、立入検査、外部調査委員会、検査終了通知書の交付にかかる論点を掲げています。

特筆すべき点としては、外部調査委員会の論点について、証券取引等監視委員会の案文では外部調査委員会の調査結果等に「事実認定の基礎にすることができる」と起案された箇所につき、日本公認会計士協会は、外部調査委員会の調査結果等は、「基礎」ではなく、「参考に止める」ことが「適切」であり、「改める必要がある」としていることが挙げられます。

しかしながら、証券取引等監視委員会の開示検査において外部調査委員会の調査結果を参考に止めるとするならば、同委員会自らが、事実認定の為の全ての証拠を直接入手しなければならないことにもなりかねません。外部調査委員会による適切な調査結果が報告された場合においても、証券取引等監視委員会による開示検査手続が全く軽減されず、その受忍を余儀なくするものとすれば、検査対象企業にとっては、更なる事務負担や開示検査期間の長期化によるコスト増などが危惧されることになります。
さらに、外部調査委員会の調査結果が、検査対象やステイクホルダーにまで軽視される可能性も否定できません。

当該箇所の意見については、検査対象企業の事務コスト負担や、外部調査委員会の調査活動に弊害を及ぼす可能性のみならず、日本弁護士連合会による「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」が明示する、独立性やステイクホルダーを重視する観点との整合性にも、議論の余地があると考えられます。

「不公正ファイナンスの実態分析と証券取引等監視委員会の対応」が証券取引等監視委員会より公表されました

2013年6月下旬に、証券取引等監視委員会から「不公正ファイナンスの実態分析と証券等取引監視委員会の対応」が公表されました。
近年、同委員会は、金融商品取引法の罰則規定である第158条(偽計)を適用・刑事告発した上場企業の開示規制違反事例につき「不公正ファイナンス」と概念して、市場関係者に対する積極的な広報活動を行っております。
本件の公表は、実際の告発事例を実名とともに、スキーム図も掲げてファイナンス手法や登場人物、その後の経緯なども紹介しており、非常に具体的かつ斬新な内容となっています。
「不公正ファイナンス」と区分される証券市場に対する侵害行為については、好ましいものでないことは理解できても、資金調達行為そのものは違法でないことから対応は簡単でない、といった意見が、時折聞かれます。
とりわけ、公認会計士の立場からは、不公正ファイナンスと会計監査の意見表明との関連は少し分かりにくいものと思われます。
しかし、本件の内容には、上場したものの業績不振に陥った新興企業や、ビジネスモデルに行き詰った老舗企業にアレンジャーなどが関与して、経営支配権が移転した後、MSCBの乱発などにより上場を維持し、市場から資金調達するだけの事業体として生き永らえる、いわゆる「箱企業」化するプロセスが丁寧に記載されています。これまで不公正ファイナンスの実行に利用された上場企業は、経営実態が不明瞭であったケースが多いことがわかります。
一般論として、深刻な経営不振で、経営実態が不明瞭な状況に陥っている場合には、企業統治や内部統制が脆弱なことが珍しくありません。また、発行株式数が少ない企業の株価操縦は、比較的たやすいものと思われます。
そういった一定の上場企業は、「箱企業」に変貌させて思いのままに利用しようとする正体不明の勢力に狙われやすいだけでなく、その他の不正行為、たとえば、株価を維持するための粉飾や、架空増資、不適切な不動産の現物出資なども併発するリスクが高まることまでも、これらの過去の事例は示しています。
今回の公表は、不正リスクの考察にかかる生きた教材として、大いに利用可能なものになると考えられます。